オズの本棚

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30代中小企業診断士が自分が読んで役立ったビジネス書をご紹介。悩める若手〜中堅ビジネスマン向け書評ブログです。

【レビュー】ロジカルデータ分析

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評価:★★★☆☆

僕も仕事柄、そこそこ大きな大量のデータ分析を行う機会があります。データをいじくりまわしているのは、とても楽しいのですが、締め切り間際になっても何も示唆が得られない場合、時間を無駄にしてしまった感がハンパないないです。本書では特にビジネスにおいて、どのように収益に活かすかという視点から、データ分析の方法を紹介しています。

概要

著者の高橋氏は、現役バリバリのデータサイエンティストです。20年近くデータ分析に関わったキャリアから、組織に成果をもたらす「勝つためのデータ分析」を紹介しています。本書は、「基礎編:価値あるデータ分析の流れ」と「実践編:未来のシナリオに沿ったデータ分析での戦い方」に分けられています。

データ分析は煙たがられる!?

元になるデータの質が良く、正しい分析を行えば、きっと正しい結果がついてくると思っていました。しかし、世の中そうそう上手くはいきません。いや、僕の分析が悪いのはわかってるんですが、なんとも虚しくなってしまいます。著者の高橋氏も若い頃は失敗ばかりだったと述べています。

無理に難しい統計理論を使い周囲を困らせたり、データの質が悪いとデータに責任を押しつけたり、分析結果をうまく相手に伝えられず不思議がられたり、色々なことがあった。〈はじめに P.2より〉

そのような分析者の姿勢は、組織の中でデータ分析の価値を下げるだけになるそうです。僕も肝に銘じなければ。

価値あるデータ分析って?

どうせ分析するのであれば、その仕事に価値があったと認めてもらいたい。高橋氏は、分析力よりも収益力が重要だと主張しています。

ビジネスでデータ分析をする時、収益化まで意識しなければならない。単にデータを蓄積し見える化をしたり、分析をしたり結果を出しただけでは価値がない。

〈データ分析は「分析力」より「収益力」 P.13より〉 

おぉ、これまでの僕のデータ分析の姿勢は全否定されました。確かにBIツール使ってジオデータに落とし込んで、商圏データの見える化できるとワクワクするのですが、その活用方法はまったく思いつかなかったりします。

ビジネスは逆算

闇雲に分析をするのではなく、どのようなデータ分析結果があれば、報告された相手が価値を感じるのか。本書では、そのための手法として、「逆算アプローチ」を紹介しています。

利益を10億円アップしたい

(収益目標)

誰から10億円を得るのか?

(顧客の明確化)

そのために何をすればいいのか?

(アクションの明確化)

アクションを成功させるために、どのような分析結果が必要となるのか?

(インテリジェンスの明確化)

その分析結果を出すために、どのような分析をすればよいのか?

(データ分析の明確化)

その分析をするのに、どのようなデータを集めるべきか?

(インフォメーションの明確化)

〈何をすべきかは『逆算アプローチ』が教えてくれる P.51より〉

この考え方、営業交渉術や資料作成本、さらには会社経営やキャリア開発系などにもよく出てきますね。つまりは、ロジカルに行動しようとする場合、逆算アプローチが必須ということなのでしょう。

未来志向のデータ分析

と、ここまで本書を読み進めたのち、衝撃的な内容が書いてありました。要約すると、「データに基づいた分析はあくまで過去の時点で正しかったこと、未来の延長線上で通用するとは限らない」ということです。本書の実践編では、ここから未来予測に関するシナリオ作りやそのシナリオへ対応する組織体制の話になっていきます。著書の高橋氏は、内閣府時代に国防関連のデータ分析に携わっていたそうです。その経験からシナリオについて次のように述べています。

シナリオ作成で重要なのは、誰もが想定できる「想定内」の当たり前のシナリオを生み出すことではない。まさかと思える「想定外」のやばいシナリオをいくつあぶり出せるかにかかっている。

〈過去の延長線上の分析に未来はない P.98より〉

ここまでくると、かなり経営よりの視点となってきますね。週次・月次の細かいデータ分析を担当の僕には若干オーバスペックなお話かと感じてしまいました。きっと経営者や経営企画部門あたりの方には刺さってくるお話なのでしょう。

まとめ

本書データ分析をする際の基礎となる考え方が学べます。この本で、データ分析の流れを理解した後、よりテクニカルな話は専門書で学んでいくという感じですかね。データ分析に興味のある若手ビジネスパーソンやデータ分析に苦手意識を持つミドル層の方にはおすすめです。

【レビュー】GRIT やり抜く力

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評価:★★★★★

有名な法則に「1万時間の法則」というものがあります。1つの分野を極めるためには10,000時間を費やす必要があるという法則です。仮に、仕事に置き換えた場合、8時間× 20日×12ヶ月= 1,920時間/年ですから、約5年かかることになりますね。僕自身は、性格的に1つのことを深く学ぶよりも、広く浅く知識を手に入れたいと思ってしまうのですが、どうやら偉大な達成をするためには、本書で紹介されている「GRIT」と呼ばれる「やり抜く力」が必要らしいと聞き、本書を手に取りました。

概要

近年Googleでは、この「やり抜く力」の強い人材を積極的に採用し始めたといいます。長期的に見た場合は、「才能」よりも「継続して努力し続ける能力」が成功へのカギだと認識され始めています。しかし、そもそも「やり抜く力」とはどのようなものなのでしょうか。そしてその力を伸ばすにはどのようにすればよいのでしょうか。本書はこのやり抜く力の第一人者であるダックワーズ氏が、プロの音楽家や著名な漫画家、スポーツ選手、大学教授からジェフ・ベゾスまで、様々な分野で功績を残した人々の実例をもとに長年の研究について解説されています。

何よりも努力が大事

この本を読んで、僕が1番衝撃を受けた公式が下に書き出した達成の方程式です。

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上記式の「努力」とは「やり抜く力」です。この方程式、努力をしないと何も達成できないことを表しています。「才能」は「スキル」に関係するだけで、偉大なことを達成することには直接的には関係していないからです。

「才能」すなわち「スキル」が上達する速さは間違いなく重要だしかし両方の式を見ればわかるとおり、「努力」は1つではなく2つ入っている。「スキル」は「努力」によって培われる。それと同時に、「スキル」は「努力」によって生産的になるのだ。

〈第3章 努力と才能の「達成の方程式」P.71より〉

超人的な仕事ぶりや成果を見ると、「自分とは才能が違うから」と短絡的に考えてしまいがちですが、それこそオリンピック選手は20年近く朝から晩までひたすら練習をし続けてようやく金メダルを獲得すると考えれば、この努力をやり抜く力の強さが、人生において重要だと言う主張も頷けます。

 

ダックワーズ氏の研究によれば、「やり抜く力」は、後天的に伸ばすことが可能であり、少し手ほどきを受けるだけで、大きな効果が現れることがあると主張しています。そのやり方に関してはぜひ本書を読んでいただきたいのですが、僕個人が1番刺さった部分は、「意図的な練習」という考え方です。やり方は至ってシンプル。

  1. 意図的に自分がまだ達成していない困難な目標を設定する
  2. 集中してその目標をクリアに取り組む
  3. 目標クリア後、改めて自身の弱点克服になる目標設定を行う

ね、非常に分かりやすく、かつ、大変そうですよね。このような人的な練習を続けるためにはどのような心構えが必要なのか、この本全体を読むことで、「意図的な練習」を実行する気概が養われます。ほの本は、読んでいて本当に僕のこれまでの甘さを痛感しつつも、頑張ってみたいと思わせてくれますね。

まとめ

この本の後半からは、具体的なやり抜く力の伸ばし方について、教育史的視点から描かれています。ビジネス的視点からも、部下の育成に大きな示唆を与えてくれるパートとなっています。今後、マネジメントを担っていくミドル層や小さな子供を持つ親御さんにも様々な発見がある1冊だと思います。

Appendix

ダックワーズ氏は、コンサルタントから公立中学教師となった異色の経歴を持っています。本書の「やり抜く力」に注目するきっかけは、教師時代のIQテストだったそうです。そんなきっかけから、自身の研究内容について発表しているTEDの動画があります。ご興味のある方はご覧ください。6分ちょっとで終わりますので、おすすめです。

www.ted.com

【レビュー】マッキンゼーで25年にわたって膨大な仕事をしてわかった いい努力

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評価:★★☆☆☆

僕が新入社員として入った会社は、朝から晩まで働くことが当たり前の会社でした。夜遅くまで残っている事は努力の証であり、上司の評価も仕事の時間で左右される傾向がありました。今にして思えば、新入社員に任されている仕事は当時のマネージャーからすれば何を評価すればいいかわからず、結果的に仕事の時間=やる気とみなして評価していたんじゃないかなぁと思います。そんな風土で8年近く育ったものなので、なかなか夜遅くまで仕事をする癖は抜けません。そんな時、本屋でふと見た本の一説に「若い時に短時間で終わらせる仕事の癖をつけておかないと、中堅になってもベテランになっても遅いまま」と書いてあり、思わず買ってしまったのがこの1冊です。

概要

マッキンゼーコンサルタントとして活躍された著書の山梨氏は、努力をするのであれば、労力やかけた時間ではなくその努力の質が重要であると主張しています。本書では「いい努力」の定義を、押さえた上で75個にも渡るポイントを紹介しています。

ビジネススキルの総点検に

本書では、前半部分が努力に関してのマインドや行動についての変革を起こす話がメインとなっています。後半部分は、より具体的な時間術や行動法、チームマネジメントについて触れられています。75個にもわたり良い努力と悪い努力のポイントが紹介されていますので、あるポイントは「もう出来ている」であったり、別のポイントは「まだまだ精進せねば」という状態であったり様々です。ちなみに僕は半分近く引っかかりました。面白いもので、自分が悩んでいる点に関して、すぅーっと心に響いてきます。

ミーティングは手ぶらで

例えば、「なるほどなぁ」と思ったのはミーティングは手ぶらで行くというポイントです。ミーティングとなるとついつい資料を用意したくなるのですが、山梨氏に言わせるとこれが問題だそうです。部下の立場としては、仕事をしている間を出したくなってしまうのですが、とりあえずで作成された書類は悪い努力だとバッサリ切り捨てられています。本来は上司の方が情報量が多いので、正確な情報を部下に伝えることを意識するべきだし、部下は詳細に上司の意図や目的を聞き出すことが先決だと述べられています。決して手ぶらで行くことを推奨しているのではなく、その裏には上司も部下もまずは情報共有をしっかり行うマインドを持つことだと僕は解釈しました。

f:id:yositaca:20160912233733j:plain 鍋の中のセロリ

もう一つ、心に響いたポイントは「正しくなくてもユニークな意見は価値がある」という考え方です。もちろん「正しくてユニークな意見」が一番価値が高いのが大前提です。本書ではその考え方を鍋パーティに例えて述べています。

お金がある人は肉を買ってくる。近所に評判の豆腐屋がある人は、豆腐を買ってくるだろう。

〜中略〜

セロリを買ってきたら全然合わなくて、「セロリは違うだろう」という話になるかもしれないが、「なぜセロリがダメなのか?」と考えるきっかけにはなるし、セロリ抜きの鍋の正しさを確認できるかもしれない。あるいは、薬味に使えるかもしれない。少なくとも、評判の豆腐がすでにあるのに、まあまあの味の豆腐をさらに一丁、二丁持ってくる人より価値は高い。

( 間違っていても「ユニークなこと」を発言する〈P.227〉より)

こういうマインドでいれば、会議の場での発言も活発化するんでしょう。的外れとユニークさは似て非なるものだと思いますので、その当たりはきちんと意識します。

また、ユニークつながりですが、時間ができたら外に出て自分自身のインプットを増やすことで、新しいアイディアが広がっていくと言う話は、先日紹介した「アイディアの作り方」と同じような話だなぁと感じました。やはりずっと仕事ばかりしているとよろしくないパターンなのでしょう。

まとめ

新人ビジネスマンから中堅、ベテラン社員まで幅広い層の人たちが読んで損は無い一冊なのかと思います。一方で、広くポイントを紹介している本なので、すでに特定の悩みを持っておられる方には若干物足りないかもしれません。どちらかと言えばこの本を読んで、自分の努力の仕方がから回ってしまうポイントを見つけて、その後特定分野のビジネス書で深掘りすると言う使い方がいいと思います。

【レビュー】インクルージョン思考

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評価:★★★★☆

僕の仕事をしていてよく発生する問題、どうしてもその場その場の対症療法的なアイディアが多いんですよね。そう思ってしまうとそのアイデアがうまくいかなかった時に、次に出す企画も対症療法的な方向になってしまうのです。ところが一緒に仕事をしていてすごいなぁと思う人は、企画の方向性が根本から変えてきて、「この企画ならチャレンジする価値があるんじゃないか」と感じさせてしまうんですよね。そんなすごい人のように素晴らしい企画を作り出したいと思いこの本を読みました。 

概要

著者の石田氏は、世界ふしぎ発見やテレビチャンピオンなどの放送作家として担当していました。本書では、放送作家として25年以上にも渡りアイディアを出し続けてきた石田氏のひらめきの生み出し方を紹介しています。

インクルージョンなアイディア

あまり聞き慣れない、「インクルージョン」という。辞書によると、「包括的」と言う意味だそうですが、なんとなくわかりにくいですね。本書では次のように定義されています。

インクルージョン思考」とは、「複数の問題を一気に解決する」アイデア、つまり「インクルーシブなアイデア」をつくるための思考法のことです。

ビジネスの現場では日頃からトレードオフの問題が発生しています。「早さを優先すると、正確さが落ちる」とか「コストを削減すると品質が担保できない」とかですね。そのような複数絡み合った問題を解決するのがインクルージョン思考だそうです。一例として、「食べられるパラシュート」のエピソードが紹介されています。スペイン内戦時、国民戦線軍は包囲された仲間を助けるため、航空機から物資をパラシュートで投下していました。しかし、パラシュートの在庫が底をついてしまったとき、なんと彼らは七面鳥に物資をくくりつけて投下したそうです。これにより、物資は無事に到着するとともに、七面鳥は食料として活用できるという、まさに一石二鳥のアイデアを実現させています。 

インクルーシブなアイデア≠画期的なアイデア

著者の石田氏も駆け出しの放送作家だった頃は、とにかくアイディア出しが苦手だったそうです。ところが一定のルールに従うことで、インクルーシブなアイデアがひらめくようになったと述べています。ただし、その大前提として、「画期的なアイデア」という既成概念を取り払う必要があると述べています。

「画期的なアイデアのひらめき」は、天から才能を与えられた人だけに発想できることだと思っていないでしょうか。

中略

(インクルーシブなアイデアは)そのアイデアによって、複数の問題が一気に解決することがわかってしまえば、それは「あまりにも当たり前」に思えることです。なのでライバルにしてみれば、なぜ自分はそこに気づかなかったのかと悔しい気持ちになるのです。

僕がよく出す企画の場合、「何を言っているかよく分からないし、本当に実現できるの?」とツッコミが入ってしまうんです。一方、 すごいなって思わせるアイデアって実はそんなに難しくないんですよね。だからこそ、周囲の人々の理解も早いし、実現可能性も高くなるんです。

インクルージョン思考の手法

この発想法の具体的な手順については、古典的なアイディアの発想法に基づいています。その発想は大まかに3つのステップに分かれます。

  1. その問題について掘り下げる
  2. その問題を忘れる
  3. 突然アイディアが浮かぶ

何となく言いたいことはわかるのですが、じゃぁ具体的にどうすればいいのか。本書では、質の高いひらめきを産むために下記のような行動を紹介しています。

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一番、参考になったのは「自分の経験を振り返る」という部分でしょうか。自分自身がどう感じるのかという原体験があるからこそ、アイデアのオリジナリティが付与されるのでしょう。僕とまったく同じ経験をした人間はこの世に存在しません。他の人と差別化できる重要な資源はその点にあるのかと思います。

まとめ

この本を読むことで、僕自身の中で、アイデアに対する認識を改めることになりました。インクルーシブなアイデアを出すためには、僕自身の経験を積むこと、そしてきちんと振り返る必要があるなと思いました。そしてアイデアはやっぱり寝かせないと思いつかない。締め切り間際になって考えるのではなく、余裕を持って仕事する時間術を絡めないといけませんね。

Appendix

著書の石田氏、実は放送作家になる前は落語家だったそうです。なんと伊集院光氏の兄弟子にあたるらしく、石田氏の放送作家転身のきっかけになったそうです。そのあたりのエピソードが下記リンク先にて紹介されてます。詳細なエピソードを知りたい方はどうぞ。

【レビュー】「時間消費」で勝つ!

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評価:★★★★★

まだ一人暮らしを始めたばかりの頃、よく母親からは「自炊をしなさい」と口酸っぱく言われていました。そんな時、僕はお決まりのセリフで返したものです。「1時間かけて自炊するより、コンビニで買って5分で食事を済ます方が合理的である」と。

栄養の偏りや家事の技術低下などの問題点はありますが、このような考え方自体は、「時間」が重要な行動選択の要因であるという現代の若者の感覚に近いのではないかと思います。

本書ではなぜ「時間」という要素が消費者を動かしているのかを理論的に説明しながら、今後の新しい消費者向けビジネスの方向性を描いている一冊です。

概要

著者の一人である松岡氏は、スマホの登場により、すきま時間すらスマホを覗き込むようになっていた経験から、「時間資本主義の到来」を発表しています。本作は「時間資本主義」の世の中ではどのように消費者の行動が変化し、新たな商品・サービスが求められるのかを解説しています。

スマホの登場で消費者が変わった

僕が初めてスマホを手にしたのはiPhone3Gだったので、もう8年前になります。それまでのんびりとした大学生だったのですが、スマホを持つようになって感覚がちょっと変わりました。手持ち無沙汰な時間ができると、とても「もったいない」と感じるようになりました。たった1分でも、「この瞬間スマホを出せばニュースや某掲示板のチェックができるのに…」と、とても損をした気分になっていました。

この本では、スマホの登場により、これまで消費者が無駄にしてきた時間が有益に活用できることができ、その結果、消費者の時間に対する価値観が変化したと説明されています。

たった数分や数秒といった「すきま時間」の価値が増大することは、様々な分野に大きなインパクトを与える。我々の消費行動や他人との距離感が変化してくる。はたまた、生き方や人生観まで変化してくる。

僕自身、商売上、B to C向けのスマホアプリに関連する仕事をしていますので、この本で提唱されている消費者行動の変化は非常に納得度が高いです。

消費者の変化に対応するために

「時間」に対する相対的価値が向上したため、消費者は、いかに時間を節約するか、もしくは、いかに創造的な時間をすごすのかの二極化が進むと述べられています。そして、そのような消費者の変化に呼応するように、企業の行動も変化していきます。企業は従来の「品質」や「価格」といった軸とは違う「時間的価値」という要素を考慮することになっていきます。

過去とは異なる時間に対しての価値を感じる消費者を相手に商売を行う企業側も、マーケティング戦略や商品戦略で大きな転換が迫られてくる。

節約 or 創造的時間利用に合わせた空間を提供することで、消費者の時間的視点でのニーズを掴み、時間消費の競争に勝ち残ることができると述べています。

まとめ

小売業・サービス業に代表されるB to Cに関わる方々には、本書は非常に興味深い一冊になるのではないでしょうか。巷で流行している「コト消費」や「シェアリングサービス」などが台頭してくる背景がすっきりと頭に入ります。

僕も消費者行動分析に煮詰まった際には、「品質」や「価格」とは違う「時間的価値」という新しい視点を意識するようにしたいと思います。

 

【レビュー】なぜあなたの仕事は終わらないのか

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評価:★★★☆☆

皆さんは締め切りに余裕をもって仕事を終えるタイプでしょうか。締め切りまでに仕事が終われば、進め方はその人次第。10日後の締め切りに対して、すぐに取り掛かろうが、1時間前に取り掛かろうが、その仕事が無事に終われば誰にも文句は言われません。

僕自身、ついつい締め切りまで余裕がある場合、該当タスクを後ろ倒しにしてしまう癖があるのですが、その癖で痛い目にもあってきました。締め切り間際のプレッシャーでなんとか仕上げたものの、内容が伴わず、結果その仕事の評価は最悪に…。その仕事にかけた時間も無駄になり本当にもったいないことをしたと今でも思っています。

本書はそんな先延ばし癖、ついつい締め切りまで甘えてしまう癖がある方にとって、なんとも頼もしい時間術のビジネス書となります。

概要

著書の中島氏は、マイクロソフトWindows95の開発に関わった人物で、「ドラック&ドロップ」や「右クリック」の概念を形にしたという逸話を持っているそうです。そんな中島氏もマイクロソフトの日本法人から米国の本社勤務になった際、周囲のプログラマーの優秀さに脅威を感じたそうです。そのとき中島氏は時間との付き合い方と徹底的に向き合うようになったそうです。

まず、天から与えられている時間は皆平等である。ここに気がつきました。

 

人の能力がいきなり向上することはありません。ならば時間の使い方を突き詰めるしかない。

このような過程で生み出された技術が、本書で紹介されている「ロケットスタート時間術」です。

ロケットスタート時間術ってなんだ?

この本のメインとなる時間術において、最も重要な考え方は、「締め切りを常に守る」という部分が出発点となっています。そのためには仕事の取り掛かりの段階で次の3点を真剣に意識しなければならないと主張しています。

  1. どのくらいかかるか見積もる調査期間をもらう
  2. 全体の2割の時間を使い、「ほぼ完成」まで仕上げる
  3. 万が一、「ほぼ完成」までいかなければ、スケジュールの見直し交渉する

この部分、言われてみれば当たり前なんですが、中々このように進められないです。ギリギリのスケジュールで仕事を進めてしまう身としては大変耳が痛い言葉でした。

プロトタイプを一気に仕上げてしまうことで、時間的余裕が生まれ、残りの時間でゆったりと質を高める作業を進められる。万が一やばいとなったとしても、締め切り期日に余裕があれば、その後の対応策も様々な打ち手が考えられる。うーん、いいことづくめ。

細かい完璧主義じゃダメ

僕自身がどうも細部にこだわる癖があるのですが、この本ではばっさりとダメだしをされました。愚直に細部から詰めていった場合、全体の方向転換があったときに対応できないのでと指摘されています。

でもどうしても細かい部分が気になってしますというあなたに向けて素敵な言葉が書かれていました。

これは覚えておいてほしいのですが、すべての仕事は必ずやり直しになります。最初の狙いどおりに行くほうがまれなのです。スマホのアプリもWindows95も、あなたの明日のプレゼン資料もそうです。

 

どうせやり直しになるのだから細かいことはおいておき、まず全体像を描いてしまったほうがいいのです。

 

全体像がまとまると色々な人から意見をもらえるようになり、結果的に一人でコツコツ完成度を上げたアウトプットよりも高品質のアウトプットが生み出されるという正のサイクルに入ります。

本当にできるのか?

このように非常にシンプルな考え方の時間術ですが、「自分には無理」と思ってしまうかもしれません。本の中でも今パンパンに仕事を抱えている人や会社勤めの人には難しいかもしれないと語っています。

ただそれだけでは終わってしまうので、読者の職場環境に合った時間管理術も紹介されています。一言でいえば、仕事を細分化して管理するという方法なのですが、正直僕にはあまり刺さらなかったパートでした。

まとめ

本書は中島氏の幼少期〜青年期の話題も散りばめられており、インターネット黎明期のワクワク感も読んでいて楽しい本でした。学生時代のエピソードとして、やりたくないことは徹底的に効率化して、自身が好きなプログラミングの時間を作ったという話は、作業に追われる僕には深く深く刺さるお話でした。

 

【レビュー】偉大な発明に学ぶアイデアの作り方

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評価:★★★☆☆

僕の知人に、とにかく視点がユニークな人がいます。周囲の人がうんうん唸って考えている横で、サラッと独創的なアイデアを出してしまう人です。現在、いわゆるコンサル営業的な仕事をしており、常日頃から悩みまくっている僕から見ればとにかく羨ましい限りでした。とにかく新しいアイデアを考えることが苦手な僕は一冊の本を手に取りました。それが本日紹介する「偉大な発明に学ぶアイデアの作り方〜思考展開ワークショップ」です。

本の概要

新しいアイデアが出るとき、そこには閃きがあります。この本では、どのような発想の手順を踏めば閃きが生まれやすいのかを具体的な事例を交えて紹介しています。また画期的なアイデアは何より「個」の力が重要であると考え、自問自答式で「個」の力を高めるスタンスがとても参考になります。

思考展開法の起源

この本で紹介されている思考展開法は1959年にアメリカで開発されたシステム設計法を元に、革新的な製品・サービス・ビジネスモデルの企画・設計に使える創造技法としてまとめられたそうです。新しいシステムを生み出すというだけあって、新規企画を考える際には非常にためになる考え方だと感じました。この思考法の特徴は、自問自答しながら、新しい発想を生み出していける点です。朝ちょっと早く出社し、喫茶店でコーヒーを飲みながら、この本の思考のコツを使うと頭が冴えます。

具体的な考える技術のコツ紹介が嬉しい

本書の主張の全体像は、ニーズとシーズをマッチングさせるという内容です。前半のパートは過去の発明や事例から概念的な説明が主になっています。後半からは、よりテクニカルな思考技術について述べられています。

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特にSession 5以降の内容は、具体的な思考技術について触れられており、意識するだけで即活用できる内容が盛りだくさんとなっています。例えば、隠れたニーズを発掘するために、達成すべき目的を記述するとした場合、「主語がつかない表現」にすることで、既成概念にとらわれない発想が展開しやすくなると聞いて思わず納得してしまいました。

まとめ

本書では「閃きの方程式」として、”アイデア=知識×経験×考える技術”と定義しています。

斬新なアイデアを閃かせるためには、創造性を高める態度をとり、それに見合った技法を使うことによって、隠された自分の創造力を引き出すことが重要になります。考える技術を磨くことで、創造的なアイデアを生み出すことができます。 

この方程式を知って、中々アイデアが閃かない自分自身を振り返り、知識だけやみくもにインプットしたり、経験不足のせいでアイデアがでないと嘆いたりした自身の言動を反省しました。