オズの本棚

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30代中小企業診断士が自分が読んで役立ったビジネス書をご紹介。悩める若手〜中堅ビジネスマン向け書評ブログです。

【レビュー】勝てる野球の統計学

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評価:★★☆☆☆

野球という競技を統計学に基づいて指標化したものをセイバーメトリクスと呼びます。本書のポイントは、勝利に結びつく要素を抽出する方法です。野球をどのように構造化していくのかがビジネスにも応用できるのではと感じました。107ページと薄い本なので、あまり時間を掛けずにサクサク読めました。

概要

2003年、データを駆使して貧乏球団の奮闘記を描いたマネーボールという小説が話題になりました。それから10年以上経ち、データ分析も日々進歩を見せています。それがセイバーメトリクスと呼ばれる分析手法です。本書では、その分析手法の数理的背景を平易に解説しながら、勝利に貢献する指標を紹介しています。

読む人を選ぶ一冊です

まず、最初に言っておきますが、この本は野球に興味がないと呼んでいても面白くないと思います。野球というスポーツを知らないと構造化のアプローチが理解できない。ですが、野球好き、もしくは野球のルールを人に説明できる程度の知識がある人にはオススメです。

スポーツの構造化

本書を読んで一番面白いのは事象を構造化する過程が見えることでした。野球というスポーツは、3つのアウトを取ろうとするディフェンス側と4つの進塁をさせたいオフェンス側の攻防です。1つのアウト、1つの進塁にどれくらい得点に影響があるのかを客観的に分析するために、アウトカウントと塁状況の全24パターンの組み合わせの状況下での得点期待値を算出するという考え方は思わずそうかと頷いてしまいました。

さらにどの程度得点を取れば1勝分の期待値が上がるのかを統計的に導き出し、10得点が一つの目安と算定されることで、オフェンス指標は得点算出能力が、ディフェンス指標は失点防御能力が勝利への貢献へと変換される仕組みとなっています。

このロジックの立て方でプレゼンされると、非常に納得感が高いですね。ジャンルは違いますが、その昔流行った「科学する麻雀」と似た雰囲気を感じます。勘やセオリーといったアナログ的手法ではなく、得点期待値に基づいてアガリを目指す戦法です。これも麻雀を知らない方には分かりづらいですね。失礼しました。

計測できるものしか分からない

本書では、セイバーメトリクスで頻出するOPS、K/BB、URZといった打撃、投球、守備の指標が説明されます。 ただ、これらの指標は、手動で測定されたデータを元に算出されているんですよね。ということは、今後測定機器が発達することで、まったく新しい指標が誕生するはずです、きっと。測定できないものは何も分からない。データの大切さを読んでいて痛感しました。

まとめ

統計学と表題にはありますが、そこまで突っ込んだ数学は出てこないので、期待値の考え方さえ分かっていれば、数学が苦手な方でも十分楽しく読み進められます。むしろ野球に興味がないと、読み進めるのは厳しいかもしれません。また、扱っている内容も2013年度のデータなので、ちょっと古めです。発刊当時からすれば、インターネット上でもセイバーメトリクスの解説は充実していますので、入門書 or 教養書的な位置づけで読んでみるといいかと思います。

各指標はネットでググってみると詳細な説明が書いていますので、ご興味がある方はそちらもご覧いただければ面白いかと思います。