オズの本棚

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30代中小企業診断士が自分が読んで役立ったビジネス書をご紹介。悩める若手〜中堅ビジネスマン向け書評ブログです。

【レビュー】LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略

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評価:★★★★★

これからの数十年続く人生を考える上で、とても良い気付きを得られる一冊でした。寿命が100年まであったとしたら、祖父母世代、親世代とは全く違う人生プランを考える必要があります。30代前半の自分にとっては、どのタイミングで自分自身に再投資すべきかを考えるきっかけになりました。

概要

著書のリンダ・グラットン氏は人材論、組織論の世界的権威です。働き方についての展望を描いた「WORK SHIFT」もベストセラーとなっています。本書では、長寿社会を迎えた現代社会において、これまでロールモデルとして機能してきた教育→勤労→引退という3ステップは通用しなくなる中で、勤労・教育・子育て・お金についての関わりかたについて、共著者の心理学者とともに語っています。  

 100歳生きるのも夢じゃない

本書の主題は100年ある人生をいかに生きるべきかです。世界の平均寿命は過去200年間で、右肩上がりで延びており、10年ごとに2〜3年のペースで寿命が延びている計算だそうです。日本人の平均寿命は、2015年調査で、女性87歳、男性81歳。これを単純に適用すると、2050年には女性97歳、男性91歳となっています。100歳まで生きることは、SFでも何でもなく、リアルに起こり得ることなのだろうと思います。

人生のシナリオ

長寿化によってもたらされる恩恵はたくさんある一方で、労働や老後資金に関する問題も引き起こします。このような問題は、現在主流となっている教育→労働→引退という3ステージ型のシナリオを適用しようとするから発生すると、著者は主張しています。

人生設計を80歳で設計するのか、100歳で設計するのかは大きく違います。プラスとなった20年をどのように活用すれば良いのか。当然、残された時間は人それぞれ。特に若い世代に関しては、意図的に変化を目指す人生を推奨しています。なぜなら、一つのスキルに頼って50年生活費を稼ぐのは非現実的だからです。もし仮に、大学院を出て就職し、余生を15年生きるとしたら、100年社会では85歳、65年間労働しなければなりません。正直、そんな働き方、心身ともに持ちません。

これからは、10年〜20年をワンステージとして、様々なステージを組み合わせる生き方が主流となるはずです。当然、激務で仕事に打ち込むステージもあれば、家族の交流を優先するステージもあるはずです。僕も、一年間仕事をせずに、大学院入りましたが、そのように自己のスキルを再開発することも必要になっていくのでしょう。

また、いくつものステージを渡り歩くシナリオを作成するためには、過去と未来をつなぐアイデンティティが必要になると主張しています。

このシナリオで見落としてはならない重要な要素の一つは、アイデンティティだ。人生で多くのステージとキャリアを経験するようになれば、その全て貫く一本の柱をいっそうしっかりもつ必要が出てくる。そのような柱があってこそ、人生のシナリオが真の意味で自分のものになるのだ。

<第5章 新しいシナリオー可能性を広げる P.215>

就職活動や転職活動などでもよく聞かれることですが、それがより人生という広範囲にわたって必要となってくるのでしょう。

パートナーが一番大事

もう一つ、本書を読んでいて気付かされた点をご紹介します。それは、どのようなシナリオを渡り歩くにせよ、最小の核となる単位はパートナーとの2名であるということです。 100年ライフでは、変化に富む人生を送るわけで、当然、経済的に辛い時期や心の支えが必要な時期がやってきます。その際は、パートナーと柔軟に役割を変更するといったパターンも出てくるわけです。

当初、僕はこれまで最小単位は、家庭かと思っていたんですね。パートナー+子供という単位です。でも、100年生きる場合、人生における子育ての構成比って実は結構少なくなるんだと認識し直しました。子供に手がかかる時期は案外短い時間で、だいたい15歳にもなれば、自分の人生を決めることができると考えています。そう考えると、人生の半分以上はパートナーと一緒にいることになるんですね。だからこそ、健やかなるときも病めるときも、共に支えあっていくパートナーが重要になってくるのだと再認識しました。

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まとめ

これまでスタンダードであった価値観は、100年ライフには適合しません。人生の途中で、家庭を優先したり、数年がかりで勉強しなおしたり、企業を通じて人脈という資産を築いたりと様々な道筋が考えられます。本書では、そのような生き方をするためには、高いスキルが必要であると語られています。他方、旧来と同様の労働モデルを、負荷を低めながら50年続けていく人々もいるだろうと予測されています。自分が一体どのような道に進むのか、時間がある内に常日頃から考えておく必要があるなぁと感じされられました。